無心テキスト

リハビリブログ改め

SSTN①『夢評論家』

おばんです。今回から「ショートショート的な何か」略して「SSTN」というのはやってみることにしました。テレビノキオク同様にシリーズ的な方向で考えていますが、お試しなので急にやめるかもです。意志が弱い。では。

 

 『夢評論家』

人間にはいくつもの夢がある…叶った夢。叶わない夢。それでも夢は夢。その価値は変わらない。


「あっすみません!こっちの土はここですね。あっはい!次からはこのようなミスは無いように・・・本当に申し訳ございません!」

「(はぁ…俺本当はこんな肉体労働したいわけじゃないんだよなぁ…)」

 

今回の物語の主人公である西崎悠人(にしざき ゆうと)は神奈川県横浜市出身の22歳。子供の頃からゲーム夢中で毎日毎日ゲーム三昧の日々を過ごしていた。そんな西崎は当然そのゲームへの情熱を捨てること無くゲーム会社への就職を希望するも、その道は険しく「夢」は叶わないものとなってしまった。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…このまま現場での作業が続けば心身共におかしくなってしまう…」

「西崎はついに決意する。」
「もうダメだ・・・死のう・・・」


劣悪な労働環境に精神的にも肉体的にもピークに達していた西崎はついに自らの命を断つ覚悟をしてしまう。

「ここから飛び降りて楽になろう…どうせこのまま生きてたっていいことは無いしな…あーあーせめて最後にゲームぐらい遊びたかったな…」
「屋上へと上がった西崎は勤務する土木会社の辞表を靴に入れ、飛び降りる決意をする。そして・・・」
「22年の人生。まさかこんな感じで終わるとはね。完全にクソゲー。ゲームオーバーですわ。」
「お父さん。お母さん。本当にごめんね・・・」
「32階建てのビルの屋上から飛び降りる西崎。もちろんこの高さから飛び降りれば命の保証は無い。」

「う、うわああああああああああうううう!!!」
「ついに飛び降りた西崎であったが」

「・・・・・・あれ?・・・あれ!?!?!?しっ死んでないっ!?」
「おれ確か屋上から飛び降りたはずだよな・・・周りは真っ暗なここはどこ!?」
「32階の屋上から飛び降りた西崎であったがなぜかその意識はしっかりとしてそしてなぜかあたりは真っ暗。」
「これが死後の世界?いやまさかね。こんな無機質な何もない世界なわけがないよ。」

 

「それにしても何も無いな・・・」

「西崎様お待ちしておりましたよ。」
「だっ誰ですかあなた!?」


西崎の前に現れたのはスーツを着こなした20代後半のスラっとしたサラリーマンような姿した1人の男性だった。

 

「申し遅れました私、夢評論家(ゆめひょうろんか)と申します。」
「夢評論家?っていうかそもそもなんで俺の名前を?」
「いやーその件に関しましては企業秘密でしてー。」
「企業秘密って・・・まずここはどこなんだ!?」
「そちらのほうも企業秘密でしてー。」
「また企業秘密かよ。」

「当たり前の反応だと思います(笑)」
「何笑ってんだよ!あと俺はもうこんなところに居たくない。天国でも地獄でも早く連れってくれ。」
「失礼いたしました。ですが私は神様ではありません。 夢評論家です。」
「だからその夢評論家ってなんだよ?」
「では説明させていただきます。これから西崎様には西崎様自身の夢を叶えてもらいます。」
「夢を叶える!?それは本当か!」
「はい。西崎様ご自身の夢を叶えさせていただきます。」
「やったーーー!これでゲー…」
「ですがここで1つ条件がございます。」(西崎の言葉を割り込む感じで)
「条件?」
「その夢が叶ったかどうかこちらで評価させていただきます。」
「評価?それだけでいいのか?」
「こちらでの西崎様の夢を評価し、80点以上で無ければ不合格とさせていたただきます。」
「不合格になるとどうなるんだ?」
「現在のこの世界からまたやり直しとなります(笑)」
「またやり直しって…ってだからなんで笑ってるんだよ!」

「死後の世界に突如現れた夢評論家と名乗る謎の男性。そしてその男性は西崎の夢を叶えるという。これに対して西崎は憧れのゲーム会社への就職希望するが…」

「分かった。その条件に乗るよ。」
「ありがとうございます!では西崎様、夢の方を」
「俺の夢はゲー・・・」
「あー西崎様。西崎様。1つ、申し遅れていました。」
「なんだ?」
「西崎様ご自身の夢はけして言葉にせず、その思いを念じてください。」
「念じる?それでいいのか?」
「はい。それで結構です。」

「(そうだな。勿論ゲーム会社っていうのが俺の夢だ。でも待って欲しい。もしここで違う夢を念じても評価が低ければまたここに戻ってこれる。そしたらまた違う夢にすればいい。そして最後にゲーム会社だ。)」
「では西崎様。夢の方をどうぞ。」
「(俺は自由が無くて飛び降りたんだ…自由…自由…自由…自由…自由…!!!」
「ではその夢。こちらの方で叶えましょう。」


「・・・ここは・・・うっ海!?」
「しかもな…なんだこの腕では!?!?!?」
「どうですか西崎様。夢であったクラゲになられたご感想は。」
「はぁ~~~~~~!?!?!?!?いやいやいやいやクラゲになりたいだなんて1言も言ってねぇよ!」
「西崎様は『自由』を願われましたよね?」
「おっおう…」
「それこそがクラゲです!」
「いやいやいやいや!?!?!?」
「何かご不満な点でもございましたか?」
「見事に夢が実現し自由を手に入れた西崎であったが西崎の思い描く自由とは程遠いものだった…」
「いや確かに『自由』が欲しいとは言ったさ。でもさすがにクラゲは無いだろ?」
「そう言われましてもこちらから提供できるのは…」
「もう分かったよ。でこの夢はどう評価するんだ?」
「西崎様にはしばらくクラゲになって頂いてそこから評価させていただきます。今の段階では評価しかねます。」
「そっそんなーーー!?」

「クラゲとなった西崎はその後3日間生活したのであった。」
「クラゲとしてもう3日目だ…プランクトンはもう食べ飽きたし亀に襲われるしたまったもんじゃねぇーよ…はぁあ『自由』なんて軽はずみに言うんじゃなかったよ。」
「西崎様。西崎様ー!」
「おー!やっと来たか!待ってたよ。で俺の夢は何点なんだ?」
「そう慌てないでください。では評価の方に移らせていただきます。」
「西崎様の夢は……4点です。」

「4点って…まずクラゲって時点でおかしいだろ!」
「と言われましてもこちらの方ではクラゲというのが西崎様の夢と判断いたしましたので。ご了承ください。」
「まぁ分かったよ。で。さっきの世界戻るんでしょ?」
「はい。では戻りましょう。」
「夢のクラゲの評価は4点で不合格となり

「ふぅ…やっと戻ってこれたよ。まぁここが好きってわけでもないんだけどなぁ。さっきのクラゲに比べたらマシよ。」
「西崎様。西崎様。次の夢は何にいたしましょう?」

「(流石にさっきは『自由』を願って失敗したしたからもうそんなことはしたくない。純粋に『ゲーム』を願おう。)」
「(ゲーム…ゲーム…ゲーム…ゲーム…!)」
「ではその夢。こちらの方で叶えましょう。」

「こっこっここどこだ?」
「ん?体が固くてく動かない・・・ってこれゲーム機じゃないか!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
「西崎様。西崎様。どうですかゲーム機になられたご感想の方は。」
「ご感想じゃねぇよ!どういうことだよ?」
「西崎様が『ゲーム』と強く念じられましたのでゲーム機とさせていただきました。」
「あのさぁ…確かに『ゲーム』とは強く念じたよ?でもゲーム機は違うじゃんか。普通に考えたらわかるだろ?」
「そう言われましても…」
「まぁいい。この夢も評価が低ければさっきの世界に戻れるんだよな?だったらまたやり直せばいいや。」
「では素晴らしい夢の世界をお楽しみください。後日評価の方をご報告させていていただきます。」

それから3日間西崎はゲーム機として夢を過ごした。

「僕はコインゲーム。コインゲットドリーム2014楽しいよ!みんな遊んでってね!
チャリンチャリン♪」

「(ゲーム機としての人生も悪くは…いや、俺はゲーム会社以外は夢じゃないんだ!)」
「西崎はゲームセンターのゲーム機として3日間夢を過ごした。そして夢評論家が西崎の前に現れた。」
「西崎様。西崎様。夢評論家です。まずは3日間ゲーム機になられてのご感想の方お聞かせください。」
「ん~まぁ楽しいかったけどでも評価は低いかな。」
「そうでしょうか?西崎様とても楽しいんでいらっしゃるように感じましたが・・・」
「まぁとにかく評価してくれよ。」
「分かりました。評価の方に移らさせていただきます。」
「西崎様の夢は…96点!!!合格です!おめでとうございます。」
「え!?いやちょっとまっえぇえ!?!?!?」
「西崎様の夢が無事に合格されました。あれー西崎様はどうされましたか?」
「どうしたもこうしたも無いよ!俺はどうなるんだよ!?」
「このまま夢を全うしてもらいます。本当におめでとうございます!素晴らしい夢の時間をお過ごしください。では私はこの辺で失礼いたします。」
「おい!ちょっと待てよ!おい!おーーーい!」

 

西崎はゲーム機となった夢が合格と判断された。そのためにゲーム会社就職は叶わないものとなってしまった。それでも西崎は生き続ける。


「僕はコインゲットドリーム2020楽しいよ!みんな遊んでってね!」
「僕はコインゲットドリーム2020楽しいよ!みんな遊んでってね!」
「僕はコインゲットドリーム2020楽しいよ!みんな遊んでってね!」
「僕はコインゲットドリーム2020楽しいよ!みんな遊ん…    」

 

 

追記:学生時代に遊び的な感じで書いた脚本もどきをちょちょっと手直ししてブログの海に放出しました。成仏してくれよな!